ホビット 決戦のゆくえでHFRをおすすめしない理由
ホビット 決戦のゆくえを見てきた。平和な村にオークが攻めてくるとかエルフは歳を取らないとかの話はしない。言いたいことはひとつ。
HFR(High Frame Rate)はおすすめしない
なぜHFRはダメなのか
- 明るくて
- なめらかだから
以上二点について説明していく。
明るい
HFRは明るい。本当に明るい。これまでの3D映画体験を覆すような明るさだった。あれほど鮮烈な光のなかで映画を見ると、どうなってしまうのか?
あの荘厳な中つ国がニュージーランドの観光地になる。城砦はセットになり、ドラゴンがCGになる。
かなりまずい。
従来の映画では、適度な暗さがリアリティを担保してくれている。ところがHFRの強すぎる光は、不自然さを白日に晒してしまうのだ。
現代劇だとそれでもよさそうだけど、ホビットみたいな架空の世界が舞台だとちょっときつかった。
なめらか
HFRは1秒間に48コマを再生できる。なるほど。なめらかだ。
HFRで、本物の世界により近づいた表現ができるとピーター・ジャクソンは自信を持って語っている。
で、その結果、TVドラマみたいになった。
本編が始まった瞬間「あっ、映画じゃない」と感じた。どうしてそうなったのか理由はよくわからないのだけど、これまでの経験から、映画とは24コマで動くもの、と脳が記憶してしまっていたのだと思う。なめらかすぎる絵の動きを認識した脳が、目の前の映像を映画と呼ぶことを拒絶してしまった。
そして僕は、アニメにCG表現が使われ出した頃のことを思い出した。
ちょっと脱線。アニメのコマ数の話
映画は1秒間に24コマが映される(24fps)が、アニメは基本的に1秒間に8コマが再生される(8fps)。これは手塚治虫が鉄腕アトムをTVシリーズとして制作するために始めたもので、自然に見えるぎりぎりのコマ数らしい。手描きのアニメだと、動画の作成に人手間がかかるため、コマ数は少ないほうが時間と制作費が節約できる。対して、3DCGはコマ数を増やしてもそんなに手間が変わらない。そのため、1秒間に24コマまるまる使ってもかまわない。
で、昔(といっても20年前とかそのへん)のアニメは、無邪気にも手描きの作画と3DCGを同じ画面で動かしていた。8fpsに24fpsでのCGが入り交じって、かなりの違和感が生まれていた(んだったと思う。そんな記憶がある。間違ってたらごめん)。異様になめらかに動くので、別世界のオブジェクトだと一目でわかってしまうのだ。
コマ数を揃えると、違和感はほぼなくなる。CLANNADの幻想世界とか、作画もCGも1コマにしていたけど、そのシーン内では自然に見えた。(他の3コマのシーンとつなげると際だって違うアニメーションになり、異世界だと一瞬でわかる効果はあった。が、これは別の話)。
今のCGは、作画にあわせて8fpsに揃えている作品が多い。宇宙戦艦とか大量の兵士とか、けっこう自然に動いている。(また話が逸れるが、自然に見える理由はほかにもある。最近のアニメのCGは、1コマずつCGアニメーターが調整して、動き自体をアニメっぽくデフォルメしている)。
閑話休題、HFRから感じる印象
「映画じゃない」と感じるのは、ちょっとつらい。映像技術的にはより高レベルなはずなのに、安っぽく思えてしまうのだ。もしかしたら、将来、すべての映画がHFRになって、24コマの映像が消滅して……という時代になったら印象も変わるのかもしれない。でも少なくとも今は、まだ、違和感が強すぎて、consが大きい。
まとめ
HFR、よくない。