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カリフォルニア州マウンテンビュー在住のソフトウェアエンジニアがいろいろ書きます。

映画「GODZILLA ゴジラ」観てきたので感想書くよ

ゴジラを見てきた。かなりダメな部分があるけれど、そこに目をつぶれば最高級の怪獣映画だった。言葉にするなら

日本よ、これが怪獣映画だ。

という趣きだ。

まず本作、かなり日本をフィーチャーしている。原子力発電所で震災が起こるし渡辺謙だけはGodzillaでなく「ゴジラ」発音だし、ゴジラ発祥の地を意識しまくっている。

ところで本作の監督ギャレス・エドワーズ、モンスターズという映画も監督している。こちらではメキシコが舞台で、観光客狙いの犯罪グループに見える現地人や見通しの効かない雨林での恐怖をうまいこと描いている。そしてゴジラには、日本語しか話さない乱暴な労働者いっぱい出てくるシーンがある。拘束された主人公が車に乗せられて運ばれるあいだ、(日本語がわからない人からすれば)何を言ってるかわからない言葉が飛び交うのだ。

そのシーンを目にしたとき僕は「あーそっか、ああ見えてるんだ」と気づいた。

日本は外国なんだ。メキシコと同じで、よくわからん異文化の世界。こわいおっさんがいるところ。主人公のアメリカ軍人からしたら、お父さんの面倒を見に異世界に来たら怪獣が出てきてなんかすごい組織とか計画とか出てきて……という巻き込まれ型なのだ。モンスターズの、雇用主の娘を連れ戻しに来たらいろいろあって怖いエリアを横断しなきゃならなくなったのと同じ。

さらに、冒頭で日本の原子力発電所での震災が描かれている。日常シーンはほぼなくて、いきなり最初から不穏な状況。すぐに地震が起こって、お母さんが亡くなったりする。

要するに、日本はなんだか怖いところ、と観客に刷り込ませてるのだ。とはいえ、数十年前の映画——たとえばブラックレインみたいな日本を描いた映画ほど、過激に勘違いをしているわけではない。初めて日本の来た人が抱くだろう印象を強調して表現してるくらいなものだ。

……日本の描かれかたとかどうでもよかった。

そうだ。僕はこの映画の、主人公の行動動機に不満があるのです。

主人公の、アメリカ海軍大尉ことフォード・ブロディ。 妻と小さな息子のいるサンフランシスコの街を守るために戦う。のだが。

正直に言うと、それってあんまり納得できる理由じゃない。「家族のためなら戦えるよね?」という、疑問を挟む余地を無理にでもなくそうとする強引さで、気持ちが悪い。

家族愛で戦う。それはまだいい。家族愛のために、人はゾンビとか宇宙人と戦えたりする。ありがちすぎるけどそれはいい。問題は、その家族がほとんど描かれないことだ。ほんと、時間にして15分くらいしか出てこない。映画を見終わった僕がこの家族について知ったことは驚くほど少ない。妻は電話に出るタイミングとニュースを見るタイミングが悪い看護師で、息子は小さくてあんまり複雑な会話ができない、スクールバスに乗るくらいの子供。以上。

あと10分でいいから、家族関係がわかるシーンを作ってくれないだろうか。このままでは、家族を守る気持ちを理解できないまま映画が終わってしまう。

そう思っているうちにほんとに映画が終わってしまった。

ゴジラに比べたらパシフィック・リムがドラマ重視の脚本映画に思えてくる。(実際、パシフィック・リムは怪獣とのバトルに集中するため、よけいな混乱を引き起こさない脚本作りに細心の注意を払っている。擬似父娘の関係を中心にした盛り上がりもある。映画の目的に即した、調和の取れた構成である)

実際は4時間分くらい背景を語ったバージョンがあるらしいけど公開版ではカットしたらしい。ほう。でも公開版で見せなかったらほぼ意味ないよね。

あーでもゴジラがサンフランシスコ上陸してからはとてもよかった。首を鍛えてぶっとくなったゴジラは、かっこいい。こわい。つよい。でっかい怪獣が、ビルを壊して、別の怪獣と戦う。これ以上なにがいる?

ぐっときたシーンをあげていこう。

まず、高層ビルに尾を叩きつけたら崩落に巻き込まれるゴジラ。本棚が倒れたらあれくらいダメージあるだろうからリアリティあるなと思った。

その直後、主人公と目があうシーン。意志を触れあわせたように思えた瞬間、最初からいなかったみたいに煙に隠れる顔。あれがすごくよかった。本作で一番のシーンだった。最初からあれを狙っていたんだとわかった。ああ、わかったよ。おまえがナンバーワンだ。監督にそう告げたくなった。

敵か? 味方か? わからんが、ゴジラのおかげで助かった! という、いかにも怪獣映画だなーという終わりかたもよかった。

暴れないからと、ゴジラと並進する空母とか、絵的なツッコミどころも映画に彩りを添えていた。

あと、アメリカ兵がM4でムートーに立ち向かうあたり楽しかった。体格差など5.56ミリ弾が吹き飛ばすぜ! という強気の姿勢を失わない不屈の精神には感動せざるを得なかった。そういえば、ロサンゼルスに宇宙人が攻めてきたときもあいつらは通常兵器で頑張ったんだった。アメリカ軍は世界最強。宇宙人にも怪獣にもディセプティコンにも負けない。いや負けるかもしれないけどすごい抵抗するしおっさんが頑張るので、援軍とか救援とかが来ていろいろあって盛り上がる。アメリカ軍、現実に怪獣が攻めてきてもそれくらいすると思う。

最後にどうでもいいけど、お父さんは別ドラマでは覚醒剤を作る理科教師で、主人公はマスクをかぶって自警団やってた人です。気づかなかった。

まとめると

全体的にはダメダメだけど、個々のシーンは超よかった。