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カリフォルニア州マウンテンビュー在住のソフトウェアエンジニアがいろいろ書きます。

沙耶の唄 感想

沙耶の唄をクリアした。すごくよかった。

ストーリー

沙耶の唄には余分なものがない。四時間もあれば全ルートクリアできる。週末に一気に読み進めたのだが、濃厚に煮詰めた要素をじかに飲み込むような没入感を味わえた。サブヒロインとかおまけイベントとかは一切ない。最初から最後まで、沙耶の物語にどっぷり浸れるのだ。

短さはノベルゲームの魅力を強める。実は沙耶の唄のあと、名作と言われているCross†Channelをプレイしてみたのだが、20分で飽きた。問題が発生するまでが長いと、辿りつくまえに飽きてしまう。その点沙耶の唄は冒頭から主人公は問題の渦中にいるし、ホラーだし、不快だし、その環境から脱出したいという主人公の目的がわかる。行動原理がわかるから、自然と次の行動を想像するし、発生するイベントとそれに対するリアクションが気になってくる。最初から本題に入れると、最後まで読み進めたいという欲求が強く湧いてくる。

キャラクター

僕は虚淵玄の作るキャラクターが好きなのだが、それは、害意に耐える普通の人が描けているからだと思う。普通の人が普通のまま、がむしゃらになって異質な恐怖に立ち向かう。結果的にはバッドエンドになるけれど、ちゃんと敵に挑んでから負けている。彼らは簡単には諦めない。強い心を持ちながら、どこにでもいる普通の人間だ。それを納得感を持たせながら両立させているのだ。

安っぽいホラー映画だと、こんなシーンがよくある。謎の悪霊が現れて、主人公たちに襲いかかってくる。絶体絶命の危機。悲鳴をあげるヒロイン。何もできず、呆然と立ちすくむ主人公。

それを虚淵玄が描いたらどうなるだろうか? まず主人公はショットガンを持っている。だが冷静ではない。嫌悪感と絶望に飲み込まれ、叫びだす直前だ。しかし彼は恐怖に耐え、狙いを定めてトリガーを引く。初弾は外すが、二発目は敵の急所を射貫く。

「怖いけど、すぐには負けない」。これに、僕はものすごく惹かれてしまう。

そして、とってつけたような異常人物はいない。攻撃的な人間は、ちゃんと攻撃的になるだけの理由を持っている。出来事と設定に、律儀に因果関係で説明づける、職業人らしい仕事ぶりだ。

なお、登場するキャラクター、けっこう虚淵玄おなじみのタイプだ。ソウドオフショットガンを持った人を見たとき「あっこのお姉さんFate/Zeroでみた人だ」と思った。あと余談だけどこのゲーム、主人公にもボイスが入っている。CVは氷河流という緑川光だ。イケボを延々と楽しめる。ヤッター!

まとめ

沙耶の唄、急いでプレイしよう。

ちなみにグロ肉描写が苦手な人のために絵が薄くなるセーフティが用意されているのだけど、OFFにしてやろう。そっちのほうが楽しいから。