モンスターズ・ユニバーシティの感想
モンスターズ・ユニバーシティを観たので感想書く。
ひとことでまとめると
俺が、俺たちがチームだ
モンスターズ・ユニバーシティってどういう話?
冒頭三分。「はーい二人組つくってー」というトラウマ再現シーンが最大のホラーだった。アメリカでもあるんだなああいうの。恐怖のあまり席を立って劇場を出て行くところだった。マイクが勇気ある少年でなかったらあれ以上耐えられなかっただろう。
本作品はモンスターズ・インクのサリーとマイクがモンスターズ・インクに入社する前、大学生の頃の話だ。でっかい目玉のマイクが主人公。ふたりが出会う前から物語は始まる。
モンスターズ・インクでは気の優しいナイスガイだったサリーは本作ではけっこう嫌なやつだ。マイクは努力家で前向き。しかし正直、彼も人を見下してるところがあるので前半の心象はそんなよくない。
モンスターズ・ユニバーシティはマイクとサリーが成長し、変化する話だ。自分しか信じないマイクがサリーを信じ、チームを組むようになる。
どういう変化をした?
終盤、マイクとサリーは人間の世界に行き、モンスターを恐がらないはずの大人たちを恐がらせることに成功する。どうしてマイクが大人を恐がらせることができたのか? それはサリーと協力して、知的で工夫された作戦を使ったからだ。
必要だったのは三つの要素だ。
- 最大限効果的に恐怖を演出する知恵
- 大人たちの前に立ち直接恐がらせられるだけの力
- そしてチームワーク。
知恵はもともとマイクが得意とする努力で手にしたものだ。二つ目の要素は大学で出会えたサリーが持っていた。三つ目の要素、チームワークこそ、劇中でマイクが得た最大の成果だ。
努力家であり、学習し続けることで自意識を固めていたマイクは「できるやつ」なので、「できないやつ」であるウーズマ・カッパのメンバーたちを内心侮っていた。協力しても無駄だと思っているし、自分の力だけで大会に勝てるとも考えていた。
だがそれは間違った思い込みだった。ウーズマ・カッパのメンバーはその気になればできるやつだったし、マイクの力だけで勝てるわけでもなかった。大会を通じてマイクはそのことに気づき、ついに、他人を信じて任せることができるようになった。
人間の世界から戻ることができた理由を考えると、以下のようになる。
- マイクは他人を信じられるようになった
- つまりマイクはサリーを信じられる
- だからチームプレイができる。
- だから大人を恐がらせることができた。
と、こういうことで、最大の試練を乗り越えることができた。
脚本を書くほうから考えると、マイクの成長を表現するために、最後の試練はチームプレイ、マイクの知恵、努力、サリーの力で解決するものにしたわけだ。
でもそう考えると、もうちょい、マイクが他人を信頼してないとこを強調したほうがよかったかなと思う。
ここまでずっとマイクについて書いてきたけど、サリーも同様にマイクのことを信じられるようになったから大人を恐がらせることができた。チームワークこそ必要なことだったという結論は同じになる。
マイクの問題とその解決
マイクが抱える問題は二つある。
- 恐がらせる才能がないこと
- 他人を信頼しないこと
本作のプロット・ポイントはモンスターズ・インクに忍び込んで、自分たちでも努力すれば恐がらせ屋になれると思えるようになるシーンなのだけど、そこでマイクの問題が完全に解決したわけではなくて、才能のなさを解決するには、直接恐がらせる才能以外のところで勝負するしかない。そのためにはチームワークを使うしかなく、チームワークには信頼が必要、と、二つの問題は繋がっている。
モンスターズ・ユニバーシティの誠実なところは、マイクに才能がないことを最後まで貫いた点にある。才能の有無は確実にあるし、努力しても簡単には変えられない。この現実を前にしても、強い意志と工夫で才能に挑み続けるマイクを描くPIXAR。子供向けだからこそ手を抜かない彼らに拍手を送りたい。
……読み返してみると
感想のはずなのに面白かったーとかわくわくしたーとか書いてないな。 あっはい、面白かったです。PIXARがつまらない映画を作るはずないじゃないですか。
そういえば
ウーズマ・カッパの名前の元ネタはオミクロン・デルタ・カッパという社交クラブらしい。日本の妖怪河童とは関係ないみたい。
最後、モンスターズ・ユニバーシティから退学になったあと、てっきりフィアーテック(直訳すると恐怖工科大学?)に入学するのかと思ってた。せっかくライバル大学出てきたんだからもうちょい活躍してほしかったな。
ところで本作、エンドクレジットを見たら脚本担当に二十人くらいの名前がずらっと並んでいて、ああPIXARはチームで脚本書いてるんだなと思い知った。描くテーマもチームなら、描く人たちもチームだったわけだ。